カスタマー平均評価: 5
家族の心理ドラマ 私達姉妹は、買い物依存症・アダルトチルドレン・軽いうつ、をそれぞれ内面に抱えているが、母はこの事実を知らずにとても「良い娘達だ」と信じている。この本を読み終えた時に30数年の心の悩みから開放された気持ちになったと同時に、母に同情する気持ちが初めて生まれた。親子関係、夫婦関係に心悩む方には、精神書、医学書、心理書を読むよりも非常にためになると確信する。もちろん、ストーリーがしっかりしているのでまるで推理小説を読むがごとく流れるように読み進む。 このシリーズは他に4巻あり全てに共通して言えよう。
蜥蜴 メアリというペンネームで書かれた、クリスティーの作品です。何故クリスティー名で最初に発表されなかったかというと、推理小説ではないので、別人として出したそうです。殺人はありません。でも充分ミステリーな作品だと思います。旅行帰り、一人、足止めされた土地。何もない場所。あるのは時間だけ。読む本もなく、時間を持て余していると、否応もなく今までの自分を振り返っていく。そう、否応もなくです。最初は、充分すぎる満足を持って過去を振り返っていた主人公の中年の婦人。だけど時間が経つにつれ、過ぎた時を想い起こすことが恐ろしくなる。考えるのを止めたい、なのに止められず、今まで目を背けていた事実を目の当たりにさせられる。 本を読んでいる間、不思議と主人公に対する嫌悪感はなく、ただただ「頑張れ」と唱えていました。この人を嫌いになれる人は少ないでしょう。結末を知っていても、読み返すたびに「頑張れ」と言ってしまいます。 自分自身を知ること、気づかないようにして過ごすこと、どっちがいいのかわかりません。知らない方が楽と思います。でも、この本を読んで、頑張れと言っている自分がいたら、頑張った方がいいかもしれません。
ミステリーよりも恐い 殺人はないけれど、クリスティーのベスト3に入る作品だと思います。そして、読後感の恐さ、という点ではミステリーよりずっと恐いかも? やっぱり、これだけの力量を持った人だからこそ、他の作品も書けるんだろうなぁ。クリスティーの底力のようなものを感じさせられました。 子供を持つ方は絶対に読んだ方がいいと思います。 (ただ、これを読んで素直にわが身を振り返られる人は、もともとそういう素質は少ない人ではないかと思いますが)
女性だけじゃないです。男も同じですよ・・・。 堅実なアドバイス、将来を良かれと思って語る真っ当な生き方。家族みなのフォローに思いを馳せ、出来る限りの誠意を尽くす。こんな行為は、だれでもが、善意からおこなうものだ。決して悪気などありはしない。それどころかつまりは「愛情」だ。でも、それが本当に『家族のため』になっていないとしたら・・?家族が自分を好きでいてくれるから、それを口に出せないでいるだけだとしたら・・・。人と人の間に横たわる大きな淵。無意識のうちに自分を縛る「かくあるべき」という思い込み。僕は本作を学生時代に読み、深いため息が押さえられなかった。もう、10年以上も前の話だ。そして今でも迷う。共に生きる大切な人への誠意とは何なのだろうか・・。答えはたぶん、ない。人を完全に理解できるなど、傲慢だ。でも、それでも考え続ける事。答えがないと分かっていても、一生懸命になること。それだけが「愛」なのかなあ・・・。本作に描かれるすべては、永遠のテーマです・・。 アガサ・クリスティ描く、ノン・サスペンスながらそれらに匹敵するダイナミズムをもつ傑作。深く立体的な人物造形や明晰な場面描写が主人公のふとした記憶の組み合わせと見事に構成され、その完成度は秀逸。
春にして君を離れ 25.6年位前に、ミスマープルのシリーズを探していて見つけました。 ミステリーではありませんがクリスティの最高傑作だと思っています。 ヒロインのジョーンは愛する夫と子供に恵まれた裕福な中年の主婦。 新婚の末娘の看病に行っていたが帰る途中、雨季に出来た川のため立ち往生した。 時間だけがたっぷりある毎日に普段思いもしなかった色々な事に思いを巡らせるうちに、今まで満足し切っていた自分について疑惑にとらわれる。 この物語の恐ろしさは自分もそうではないかという疑惑と恐怖を読む側にももたらし 人間の、また自分の心の深奥を覗かせるというところだと思います。 最初は鼻持ちならないジョーンを次第に愚かな人と思いそして哀れになりながら、もしかして自分もそうでは?と度々???ってしまうのです。 愕然としたのは「人間として大切なものとは・・・」という概念がひっくり返ったことでした。それまで優しさとか誠実とか大いなるものを信じる気持ちとかありふれた事を漠然と考えていましたが・・・ああそううなんだ探していたものはこれだったのか・・・・と。初めて読んでから長い年月が経ちましたが現在でもそれが他のもろもろの事にとは区別してとても大切なことと思っています。(実行は難しいのですがふとした時に心に留めている自分を感じます) 訳者の中村妙子さんによると、クリスティは長い間このテーマを暖めており書き始めてからは一週間で書き上げ一語の訂正もせずに出版したとのことです。どんな深い絶望がクリスティを捕らえたのかはあずかり知らぬところとも・・・ なぜここまで深く書かれたのか私は知りたいと思いますが・・・
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